監督の作品は2〜3本しか観たことは無いので、偉そうなこと言えませんが…
正直、へぇ〜って思った(^-^;
「トランス」とハシゴしたんたけど、どちらもとっても面白い映画で、それだけで感激(^_-)
とある高校が舞台…
文学を教える男性教師が主人公。普通の高校がそれなりの成果を上げるために改革に乗り出す。その第一歩が「制服」の制定…
男性教師はこどもたちを縛り付けるだけの制度改革に疑問を感じる。
もっと根本的な手を打たなければいけないと彼なりに危機感を抱く。
彼が生徒達に出した週末の宿題は、週末の出来事…しかし、提出された宿題の出来はお粗末そのもの。
夫のグチを聞きながら、彼が読む生徒の課題を聞かされる妻は町の画廊であやしい展示会を開催している。
子供のいない中年夫婦としては、互いの時間を生徒達の課題を肴に語り合う時間として使うことで、すれ違いなどまるで無いかのようだ。
そこに微妙なさざ波を起こす出来事が…
1日の出来事を1行か2行で語ってしまう生徒達の中で、ノートの裏面にまでびっしりと書き込んできた男子生徒の登場が、男性教師の遠い昔に封印した小説家への夢を揺さぶり出す。
男子生徒は、見た物からしかインスピレーションを得られないからと言って、家族の結びつきが強いクラスメートの「家」に入り込む。
そこで見たもの、聞いたものを文字にしていく。
どこまでが真実で、どこまでが脚色された物なのか…
提出された課題を読む教師もそれを聞かされる妻も、いつの間にか生徒の語る世界にすっかり飲み込まれてしまう。
男子生徒はけして屈強ではなく、普通の少年で、クラスでも目立つ存在ではない。
そんな彼の頭の中に展開される物語は異質だ。
彼は父親と2人暮らし。夫に愛想を尽かした母は息子を置いて、家を出た。その後、怪我が原因で働けなくなった父親の介護をしながら生きる男子生徒には、普通の高校生として暮らせる時間が無かったんだろう。
彼は、自分の居場所を探しているんじゃないだろうか。
新たに自分の居場所を作るのではなく、既にある「家」に入り込んで、自らの居場所を強引に作り出そうとする。
少年の何を考えているのか分からない瞳…
友人の家庭崩壊の一因を作り出していることを教師に指摘された彼は、ターゲットを変更する。
小説の世界が異様な空気に包まれ始めた頃、書くことを止めさせようとした教師との間で確執が生まれ、彼は一旦教師の前から姿を消すが…
結局、教師の人生を打ち壊した…
そして、また彼の「家」探しが始まる。
ある意味、サスペンス・スリラーっぽいです(^-^;
フランソワ・オゾンって、もっと軽やかな映画を作る人だと勝手に思いこんでたので、ちょっと驚いた。
終盤、男子生徒の目つきが鋭くなって、この「名もなき毒」の恐ろしさに気づくあたりで思ったこと…
「少年は残酷な弓を射る」みたいだということ。
あの少年と同じ。自分では自覚なく重ねる罪…
あれほど後味は悪くないけど、ズシンとくる映画だった。
ラストは「裏窓」みたい…ピアノ弾いてる人、いた?