今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

幸せのありか


岩波ホールにて鑑賞。


先週公開の作品で、地味な映画だと聞いていたから、そんなに込まないかと思ってたら、そうでもなかった(((^^;)


「ミンヨン」の時はまだ導入されていなかった整理番号入場制。今回が初めてだ。


いつものように上映開始時間の30分前に劇場入口に到着。


当日券の人は1階チケット売り場で、整理番号入りのチケットを購入して、10階へ。私のような前売り券持参者は、直接10階の劇場入口に行き、そこで整理番号を貰う。それぞれ番号を貰う場所が別なので、面倒くさい(>_<)


しかも、あらかじめ、前売り券を購入している「お得意様」を一旦10階まで呼んで、発券はいかにもお粗末。


当日券の窓口が混み合うことを避けるためとは言え、なぜ前売り券購入者がわざわざそんな回り道をせなあかん(怒)


いつも開場時間は上映開始時間の30分前。その前に来た人は、劇場入口前の踊り場から階段に列を作る。


列の順に静かに入場する。たいがいは…最近、列を無視して割り込んで入ってしまう人をよく見かけていた。そういったことへの配慮もあるのかなぁ。


でもね、そんなことする人は整理番号入場制にしたって、同じだよ。


現に今回、私の真ん前で、呼ばれてない番号なのに、さぁ〜っと券をヒラヒラさせて入って行っちゃって、同行の仲間は置いてかれたくないからって、「まだ番号が呼ばれてません」ってかかりの人に言われてんのに(要領が悪いから捕まっちゃった‼)、「あの人は先に行ったわよ〜」って制止を振り払って入っちゃったよ…


こんな醜い状況を目の当たりにして、一気に気分が悪くなった。


ご意見しとこうかな…新しい制度にするならするで、万全を期して欲しいし、前売り券を購入している意味も考えて欲しい。


結局、入場は15分前に統一された。30分前に到着した時には、既に整理番号が30番を超えていた。これからはもっと早く来ないとダメってことだ。


でも、岩波ホールは早く席を取ったからといって、良いとは限らない。


古い劇場なので、ほとんど傾斜が無い。しかも、椅子の背もたれは低く、前に座る人の影響をかなり受ける。


前の席に後から座高の高い人が座ってしまうとスクリーンに前の人の頭がかかる。今回も相方の前に座った女の人が背はさほど高くないのに、座高が高くて、上映前に急遽席を移動したくらい。


良い映画を上映してくれるけど、如何せん観にくいのはどうにもならず。何回かに1回は不愉快な思いをして帰るという劇場なのだ。


ここから、本編の感想。


なんと言ったら良いのかなぁ。


感動はするけど、良いエピソードばかりじゃないし、ただ感動する映画だと紹介するのは違う気がする。


主人公は小児麻痺の影響で手足が不自由で1人で歩くことは出来ない。言葉を発することも出来ず、幼い頃に医師から知的障害もあり、植物と同じ状態だと診断されてしまう。


それでも、両親は諦めず、彼に語りかけながら、育てていく。


彼には、きちんと両親の言葉は届いていたけれど、彼が言葉を発したり、感情を表現出来ないと思い込んでいるから、彼の精一杯のアピールもただの発作にしか受け取ることが出来ない。


あの時、何かの偶然で、ソファの下の銀のブローチが見つかっていたら、主人公と家族のコミュニケーションへの可能性は大きく高まっていたはずだ。(ここはネタバレしちゃうので、これ以上は劇場で‼)


でも、現実は厳しい。


初めて、自ら心を通わせた少女は、暴力をふるう母親の愛人から逃げるために彼から離れていく。


でも、この暴力男を警察官が捕まえるきっかけは、彼の渾身の勇気の賜物。奇跡だった。彼には奇跡を起こせる力があるんだ。


でも、現実は厳しい。


それに、奇跡は滅多に起きないから、奇跡なんだ。


成長した彼は療養所に入所する。彼には物事を判断する力がちゃんと備わってるのに、受け取る側がそのことを理解できないから、知的障害者の施設に入所することになる。


そこで、彼は1人の人間として「生きる」


そこでは介護してくれる人達を点数付けしたり、彼なりの方法で、生活を楽しんでいく。


でも、現実は厳しい。


彼が心を開いた介護ボランティアの女性には純粋な彼の気持ちを利用される。


でも、何十年もの一方通行のやり取りの中で、彼は逞しくなっていた。そして、彼を心から愛してくれた父親から学んだ「諦めない」気持ちで、再び彼は奇跡を起こす。


長い長い回り道の末、意思の疎通が出来た母親の涙は、ただの喜びだけではないはずだ。きっと、悔恨の思いも強いに違いない。「私は植物ではない」という彼の言葉…


意思の疎通が出来るとなれば、彼は知的障害者ではないと判断され、療養所には居られないという。別な療養所へ移転するために彼は面接を受ける。


でも、現実は厳しい。


その面接は、結局、介護する側から見た面接で、自分達が介護しやすいかどうかを判断するものだ。


結局、彼は元の療養所に戻ってくるが、そこは彼が彼のままで居て良い場所で、彼を心から迎えてくれる仲間のいる場所。


主人公が長い道のりの末に、自分の意思を受け止めてくれる人々に出会い、新たな生活を始めたところまでを描いている。


諦めない強い心を持った彼。厳しい現実に翻弄された彼。様々な彼の表情が描かれる。


大きな何かを成し遂げたとか、彼を取り巻く環境を一変させたとか、そんな大がかりな話は無い。静かに彼がどうやって生きてきたのかが語られるだけ。


でも、彼が生き抜いてきたからこそ、それを知ることが出来た。


今も彼は療養所で静かに暮らす。


彼らにも「生きる」強い思いがあることを知らされる。


主人公を演じた青年は、本人が演じているのかと思ったほどの熱演だった。子供時代を演じた少年はどうなのだろうか。


彼の熱演無しにこの映画は成り立たない。


凄い俳優さんがいるのだ…