8月1日初日に武蔵野館で鑑賞。
場内はおじさん率が過激に高し‼
私が子供の頃、世界の紛争と言えば「北アイルランド紛争」だった。
北アイルランドが正直何処にあるのかさえ分からない子供が「IRA」という組織名を知っていた。
そんな時代の知られざる物語。こんな事があったかもしれないと思わせるリアルな緊張感。
一地域の紛争でさえ、多くの人々の命が失わへ、多くの人々の嘆きや悔恨を生むのだ。その時代の「その時」を切り取ったお話。
主人公は英国軍の新兵。彼らの初出動はIRAが掌握する地域に住む容疑者を逮捕するために出動した警察とその地域の住民とが混乱しないよう、現場に立ち会うだけの任務だったはず。
ところが、警察の過剰な暴力に怒った住民たちとの間で小競り合いが始まってしまう。
仕事の重軽の判断を見誤ったこちらも新人の隊長が兵士達にヘルメットも盾も持たせなかったために新兵たちは自らが盾となって、暴力の対象となってしまう。
そんな混乱の中で、主人公の仲間が1人激しい暴行を受け、さらには主人公の目の前で過激な活動家に射殺されてしまう。
ここから、一気に物語が走り始める。
容疑者を確保した警察は、混乱状態の兵士や住民を無視して現場を立ち去る。兵士達も現場の混乱ぶりに慌てて車に乗り、その場を離れていく。
混乱の中、たった1人現場に置き去りにされてしまった主人公。仲間を撃ち殺した男が拳銃を放ちながら追いかけてくる。
入り組んだ路地を必死て逃げる主人公。
やっと身を隠したトイレの中で、彼は恐怖のあまり、身動きが出来なくなる。
日が沈み、兵舎へ戻るため、彼の逃避行(!?)が始まる。
彼を助けてくれる者も現れるが、目立った行動の出来ない場所だから、たとえ、意に反しても、従うしかない。
息を潜めるようにして、彼はその場の状況の中で、一歩一歩兵舎への帰還の道を進んでいく。
一方、主人公が戻っていないことに気づいた隊の方も彼を取り戻すべく動き出す。
その過程で主人公が目にし、耳にしたことは、それまで彼が知らなかった世界のこと。
真実はどこに。
そして、彼は生きていては面倒な存在になっていく。彼の命と引き換えに工作員とIRA幹部との間で取り引きが交わされ、いずれも一筋縄ではいかない男たちの本性が見えてくる。
兵士となり、国のために家族を守るために軍服に袖を通した主人公。民族や宗教など様々な諍いを自らの手で決着をつけようとする革命活動家たち。
いずれも若い世代の人たちの思いとは一線を画す「現実」
ギリギリのところで、救出された主人公は自らの目で見た現実が「真実」では無いのだと思い知る。
上官の「軍で生きていく術」を知れという言葉に、彼の胸の内はどうだったろう。
彼の生還を運が良かったという一言で済ます軍隊の現実に、若く軍人として経験の浅い彼がどう感じたかは十分理解出来る。
それが、ラストに繋がるんだろう。
彼の選んだ道や結末はあまり気にならない。本編中の途切れることがない緊張感こそがこの映画の押しだ…と思う。
このリアルな世界の緊張感を体感し、そこから感じ取れる感覚を忘れないでいたい。