今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

奪還者


久しぶりのヒューマントラストシネマ渋谷にて観賞。単館上映って悲しい。そこにいかないとダメだし、スケジュール的にハシゴが難しくなる。


世界経済が破綻して10年後のオーストラリアが舞台。広大な荒野を疾走する1台のRoverが追いかけるのは、ハンドルを握る主人公が奪われた元々は彼の車だったBMW


なぜ、そこまで執拗にその車を追うのか。


その意味が分かるラストまで、舞台となる荒野と同じくらい乾いた物語が展開する。


カラッカラに乾燥した世界。荒廃した近未来は、大地だけでなく、人の心の潤いももぎ取っていく。


乾いたその世界では、僅かな心の湿り気を見せただけで、命を落としかねない。


なんとも殺伐としたシーンが続き、主人公がわずかに他者との関わりを求めるのは、瀕死の重傷を負った青年と出会ってから。彼は偶然にも主人公の車を奪った一味の1人を兄に持つ。


兄の行方を知るためには弟を生かさなければならない。主人公は、弟を車に乗せ、医者の元へ。


関わった人々をことごとく射殺していく主人公。彼に僅かでも害を及ぼす危険のある人物には容赦がない。


本来敵であるはずの主人公のために兄に銃を向ける弟。そんな時も主人公の顔には感情が浮かばない。


観客を突き放すほどの「乾き」。


そして、全てが終わった時、主人公の元に戻ったBMWにはいったい何があったのか。


主人公がトランクから出してきた物の正体を知った時、なんともいえぬ脱力感。えっ‼と。人の命の重みが…


彼が「それ」を取り戻すために奪った命。彼らが自分と引き換えられた物を知ったらどうなるかと…


全てにおいて乾ききってる潤いの無い映画を観たい人なんていないよね?でも、緊張感でなく、乾きでヒリヒリする映画も時には良いぞ‼


しかし、これは、観る人を選ぶ映画と言えるかも。ウェットな盛り上げも無いし、誰もが乾きを求める訳でも無い。「ドライ」なんて言葉を使うとカッコよくなっちゃうから、そうなるとちょっと違う。