今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

彼が愛したケーキ職人


試写にて鑑賞。タイトルがあまりに平和なイメージなので、ろくにチラシもあらすじチェックもせず、タイトル以外の事前情報なく、観始めた。


タイトルの「彼」は誰で、「ケーキ職人」が誰か分かった時、正直、ちょっと引いた(汗)


ケーキ職人の男には恋人がいる。その恋人は仕事の関係でドイツに滞在していた。定期的にベルリンにやって来る。ところが、約束の時になっても、恋人からの連絡が無い。待てど暮らせど鳴らない電話。業を煮やして、ベルリンの職場を訪ねるのだが、恋人は国へ帰った後、事故にあって死んでいた。


ケーキ職人は、恋人の後を辿る。恋人の国、イスラエルに行き、その家族が開くカフェに立ち寄る。恋人への未練なのか、恋人の匂いの残る世界に身を置こうとする。


ケーキ職人の登場は、恋人の家族、恋人が生きた世界では受け容れがたい立場にある。ドイツ人とイスラエルの人々は相変わらず、微妙な関係なのだろう。


イスラエルの恋人の家族たちは、信仰に基づく生活を営んでいる。彼らと異国の人間とは同じ街の同じ空間にいながらも、同じようには生活できない。つまり、ケーキ職人1人の存在が微妙にさざ波を立てている。


そんな中でもケーキ職人は恋人が不在となった家族の中で、少しずつ存在を確かなものにしていった。


でも、それは家族に言えない真実を覆い隠すということ。家族にとって、必要な人間となればなるほど、真実が明らかになった時の悲しさは大きくなるということ。


恋人は家族を捨て、イスラエルを離れる決意をしていた。家族を持つことの大切さや1人で生きてはいけないと言うことを説いた恋人は、たった1人の家族である祖母さえも失ったケーキ職人と家族になろうとドイツに移住することを決め、イスラエルの「妻」に伝えた。


そして、イスラエルの家を出た後、事故にあい、死んだ。


捨てられた妻の悲しさ…やっと立ち直るきっかけをくれたのは、夫が愛したケーキ職人…


1人の男を巡る男女の物語。不思議な人間関係。。。


2度捨てられた感のある妻がドイツを訪ね、ケーキ職人の働く店の前に立つ。自分の心の有り様を確かめに来たのだろうラスト。ただ見つめる女。自転車で走る去る男。男女の関係は人にはわからないもの。。。


なかなか面白い着眼で、登場人物の出自もストーリーに影響を与えてる。静かな流れの中で、ホントに愛するものを考える。