今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

歳三からの伝言


壬生義士伝」を読了した後、続け様に浅田次郎さんの新選組三部作の次作「輪違屋糸里」には行けず、少しソフトな小説にしようと思って、手にした本作。


北原亞以子さんという作家の小説は初めて手にした。武士の世界は男社会。女性の歴史小説の作家さんがどう描くのか楽しみだ。


『歳三からの伝言』北原亞以子 著(講談社文庫)


以下、感想。。。

















鳥羽・伏見の戦いに始まる戊辰の役。本作はその伏見の戦で、新選組が伏見奉行所を本陣に定めたところから始まる。しかも、近藤さんが御陵衛士の残党に狙撃されたところから…


既に土方歳三は「鬼の副長」であり、新選組のピークは既に過ぎ、家康から栄華を誇った徳川の時代が終わろうとしている時期から始まるのだ。


北原さんなりの解釈を元に語られる土方歳三の生き様。今の時代、情報や連絡はスマホでピッだけど、この時代はよほど信頼関係が無いかぎり、直接会って伝えるか、信頼できる筋を辿って伝言するしか無い。それでこそ生きる設定もある。


近藤さんが大久保大和の名で薩長側に出頭した後、彼に処された刑を知るまでに歳三は近藤さんが戻ってくることを前提に前進している…その歳三の思い…そして、結果を知った時の後悔。「情報」がいかに物語を動かすか。


読んでてページの欠落は無かったし、読み飛ばすことも無かったのだけど(汗)、話の繋がらないところがいくつかあった。後で気がついたが、章が変わると場所も時も進んでたり、前章のまま繋がっていたり、それぞれに微妙な時差があって、そこに気づかず読んでたのだ(汗)。そのため、「あれ?」って戸惑ったところもあった。


モテモテだったという土方歳三だが、女性絡みは少なくて…でも、1人蝦夷地までやってくる人がいた。司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」にも同じような思い人が登場するが、あの当時の「蝦夷地」に女性の一人旅は無いだろう!!と思ってしまう(笑)。


みんな、土方歳三、好きだよね!


仕事が出来る人で、頭の良い人で、さらに人一倍度胸のある人。最初は単なる人斬り集団の頭領くらいにしか思ってなかったまわりの人間も彼の力量を見て、見方を変えていく。それでも、長く続いた平和な世の中で、実務の出来る人間がいなかったことが彼を追い詰めていったのだなぁと…


サラッと読める本なので、ぐったり感の強い読書の後にはオススメ!