今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

函館売ります 土方歳三 蝦夷血風録(上・下)


ちょっと順番が違うかも…富樫倫太郎さんの「土方歳三」を先に読んじゃって(汗)、あらためて、函館3部作へ。。。


感想レビューを見て、1番土方歳三の活躍が楽しめそうな本書を手に取った。


『函館売ります 土方歳三 蝦夷血風録(上・下)』富樫倫太郎著 (中公文庫)


以下、感想。。。















旧幕府軍が函館に上陸し、新政府に恭順する松前藩を打ち破り、五稜郭に入城した後のお話。


幕末の風雲は、京都や江戸から遠く離れた函館にも訪れており、徳川家への衷心から薩長に対抗しようとする人と鳥羽・伏見の戦いで錦旗を掲げた薩長軍こそ天子様の味方だと思う人…


今のような情報ツールがあるわけでもなく、中央と遠く離れた彼らは自分の正義の根拠をどこから得たんだろう。長く続いた徳川家に従おうと考える方が普通に思うんだけど、この小説には、天子様に逆らう旧幕府軍こそ悪だと謳う男が登場する。


冬の間、函館に攻め入る準備に勤しんでいた新政府軍を少しでも助けるために旧幕府軍の仕事に就き、いざその時には内部情報を元に大砲に細工をして使えなくしてしまった男がいたという。順三郎という登場人物が、この男のことだったと描かれる。


でも、この人には共感できない。実際に大砲を壊した実在の人じゃなく、順三郎ね。


プロシア人に農地を貸し出して金を得ようとする旧幕府軍の動きに関して、プロシア人の背後にロシアが関与していたという新たな発想で描かれた本作。


知らぬ間に蝦夷地がロシアに浸食されてしまうという危機感を持った、順三郎やその師匠であった金十郎。


実際に戊辰戦争に突入すると師弟であったはずの2人の考えは全く相反したものとなり、金十郎は旧幕府軍に順三郎は新政府軍に心を寄せる。しかし、互いに自分の住む蝦夷が外国に侵略されることは許せない。


そこで、立場は違うが、旧幕府軍の中でプロシア人への対応に反対する土方歳三が登場する。副題に「土方歳三…」とあるのに、なかなか登場してこないのがもう焦れったい。


でも、登場してきたら、そのカッコ良さと言ったら最高でした。


だからこそ、順三郎が理解できない。確かに土方歳三はロシアの影を排除した後、わざわざ順三郎を訪ねて、一切を忘れるように言い、戦場で会ったら、敵味方で遠慮しないと言ったけど。でも、順三郎が勝ち取った奇跡は土方歳三なくして、なし得なかったものだ。それに対する行為として、大砲の破壊はあまりに姑息だと思う。


そういう人は最初からそういう発想をするはずで、土方歳三のいうロシアとの戦いに身を差し出すはずがないと思う。もっと姑息に立ち回ると…


なんだか、旧幕府軍の役人に入り込み、大砲を壊した男に無理矢理結びつけるための順三郎って気がして、そこは興醒めだな…と思う。


土方歳三の最期まで描かれる本作。どこか、旧幕府軍の中でも1人飄々として、その時が来るのを待ってるような気がする。命のやり取りの現場で必死に駆け抜けた新選組の時代とは違う時間が流れていたかのようか函館の日々。


死に場所を求めて蝦夷まで行ったと言われてるのはあながち嘘ではないだろうなと。でも、簡単には死なない。自分に見合う死に場所を見つける旅を続けていたように思う。腹を括った人は強い。


また、カッコいい土方歳三に会いたい。