今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

新選組興亡録


次に読んだ新選組の本は、新選組本に良く見られる「アンソロジー」本。評論、史談はなく、小説だけを9篇。


同じ編者による「新選組烈士伝」もあるが、出版順によるとこちらが先のようだ。


新選組興亡録 歴史・時代アンソロジー」縄田 一男 編(角川文庫)


以下、感想。。。














実は本書の最後に収められた「歳三の写真」(草森 紳一 著)を読みたかったから、手にしたのだ。


本書は新選組の歴史にそって、順を追って編集されている。京に出る前の試衛館の時代から始まる。そして、最後は蝦夷を舞台にした「歳三の写真」で終わる。


司馬遼さんの他、子母澤寛さん、柴田錬三郎さん、戸川幸夫さんなど名のある作家の短編集。名前を見れば分かる通り、ちょっと前の作家さんが多い。だから、文章が今時でなく、ちょっと読みにくい。さらに、執筆当時の「事実」が、様々な発見により今は新たな事実に塗り替えられていることが多々ある。その過去の「事実」を元に描かれているので、ちょっと違和感を覚える部分もあった。


短編全ての感想はちょっと控える。なぜなら、面白くないなぁと思った小説もあったから(汗)


では、どれが良かったかと言うと、「降りしきる」(北原 亞以子 著)が1番印象的。


芹沢鴨の愛妾、お梅は人目を引く美しい女性だった。だから、鴨を訪ねて屯所に来る度に隊士たちは目を奪われる。しかし、1人だけ彼女を見ると顔を顰める男がいた。それが土方歳三だった。


屯所である八木家のお手伝いお清がそんな土方歳三の様子を見て、「実はお梅を気にしてる裏返しではないか」と言い始める。すると、お梅も妙に歳三を意識してしまう。


その日に限って、待ち人、鴨はなかなか帰ってこない。歳三はお梅に「帰れ」と言う。自分の男でもないのになぜ命令するのか、彼女は余計に意地になって、鴨の帰りを待つことにする。


なぜ、歳三が「帰れ」と言ったのか、最後に分かる。実は伏線もいっぱいあったのだ。短編小説の短い描写の中に、歴史上の「事実」と照らしても納得できる展開があった。上手い!と思った。


目当てだった「歳三の写真」より面白かった(汗)。「歳三の写真」ももちろん面白いのだが、「写真」というものに対する当時の人の考え方や歳三の受け止め方がどうも観念の世界を巡ってるようで、今一つピンと来ない。


熊に追いかけられる土方歳三って、どうなのよって思うけど、けして追いつかず、振り切れず熊と競争する土方歳三の姿は想像するのも難しい(笑)。


そうそう、北原亞以子さんは「歳三の伝言」の人だなぁと思った。。。