『司馬遼太郎の幕末維新1竜馬と土方歳三』週刊朝日編集部(朝日文庫)
新たに新選組を1冊。以下、感想。。。
坂本龍馬を主人公とした「竜馬がゆく」、土方歳三をはじめとする新選組について描いた「燃えよ剣」。
この2作をほぼ同時期に発表した司馬遼太郎にまつわる評論。それぞれの文章に収められた内容について、週刊朝日編集部が関係者や関係場所を取材し、書き起こされた物。ちなみに、坂本龍馬は実在の人物で、「竜馬」は司馬遼太郎さんが描く虚実交じった人物のことらしい。
全体の3/4は坂本龍馬に関するもので、残りの「燃えよ剣」の記事については土方歳三に限ったものでなく、むしろ他の隊士のエピソードなどを多く含むので、正直、サブタイトルに「土方歳三」とあるのはいかがなものかと思ってしまう。
幕末のほぼ同時期、京都にいた坂本龍馬と土方歳三なのだが、一切の関わりは無い。もちろん、2人が倒幕派と佐幕派という正反対の場所を足がかりにしていたのだから、仕方ない。
だけど、どうなんだろう。龍馬も歳三もそんな線引きの上で生きてはいなかったように思うのだ。
龍馬は大政奉還まで、歳三は戊辰戦役から…2人のピークが微妙にずれているというか、龍馬の活躍の後、歳三の活躍が始まるような…
確かにあの時代に龍馬の考えは壮大すぎて、おそらく誰にも考えつかなかったろうし、先進の人を理解する余裕が時代にも人にも無かったはずだ。
彼らの考える「世界」は港の口まで軍艦を横付けしてくる、すぐそこのもので、龍馬の見る「世界」は港を出て、外海を果てしなく航海した先にあるもの…
みんなが好きになる要素がいっぱいだ。誰も考えなかった果てしない夢のような未来を、しっかり見据えていたのだから。でも、私はそんなに好きじゃない(汗)ちょっと生まれる時代が早かった人、くらいにしか…(笑)
その点、土方歳三は分かりやすい。とりあえず、自分の大事なものを守る。自分の主義主張よりそれは優先され、そのために命を賭ける。龍馬とは対極にある人。
おそらく、出会っても、互いの存在を認めても、並んで歩くことは無かったろう。だから、京の町を縦横無尽に駆け回りながら接点が無かったのではないか…
坂本龍馬という人の本当の考えを理解してた人は誰もいなかったのだろうな。まわりの人たちは見た事も聞いた事も無かった価値基準で話す龍馬にただただ心酔してただけのような気がする。だから、実際の政治の局面で動く、時の薩長の幹部には彼を疎んじる人はいただろう。夢物語に付き合ってはいられないと。。。
でも、夢物語を語った人の方が後世の人たちにはウケが良い。そんなもんだよな(笑)
もっと、土方歳三について読みたかったな。資料の量は圧倒的に差があるのだから、1つの本にしなくても良かったのに。残念。