今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

土方歳三 戦士の賦(上・下)


新選組関連の本を読み出して、二月になる。図書館で借り出すのはそろそろ限界になってきた。


たとえ予約がなく、すぐ借り出せても初版の単行本ばかりで、既に加筆修正された文庫版が発行されているにもかかわらず、そちらまで取り揃えてはいない…


次々と新刊が発行されるのだから、図書館として、そのいずれかを所蔵してくれてれば、役割は果たせているわけだ。売れっ子作家の作品以外はなかなか厳しい状況だ。


既に絶版となった本もあり、古本屋さんを歩き回る覚悟のない私はブックオフのお世話になっている(汗)


そんな一書を読了した。


土方歳三 戦士の賦(上・下)』三好徹 著(学陽書房 人物文庫)


以下、感想。。。















以前、三好徹さんの新選組に関する小説は読んでいる。本作は土方歳三にフォーカスしたもの。


男の生きる道をひた走るカッコいい土方歳三が全編に溢れている!


文庫版でさえ初版が20年も前なので、諸々その後の調査で明らかになった史実については考察されていないはずなので、これまで読んだ小説と少し違う点もあるにはあるが、小説だから、これでOK!


函館の最期の時まで描かれる本作の良いところは、函館までやって来る女が登場しないこと(笑)。これ大事!


当時は男だって何の手配も無ければ、函館にやって来るのは難しかった時代だ。いくら小説だって、史実をベースにしてる中で、そこだけファンタジーでは一気に興醒め。その点、確かに京都時代によしみを通じた女は登場したが、それだけだ。


何かの本で読んだのだけど、京都時代、新選組の幹部たちは屯所の近くに休息所を持っていたのだが、土方歳三に関してはそれを探し出すことが出来なかったのだそうだ。確かに彼の仕事の関係上、屯所に詰めていることが多かったのは事実だが、休息所を持っていたと考えられている。それが女との生活の場なのか、何かしら仕事の関係で必要とした場なのか。彼に関してはそれすら分かってないらしいが、その在処は掴めなかったのだという…


土方歳三とは面白い人だ。単なる田舎のモテ男の悪ガキが動乱の時代にあって、本人も気づかなかった才気を発揮していく。だから、小説にも書きたくなるよね。


最後の最後で三好さんは、維新後薩長政権の要職に就いた五稜郭の生き残り幹部たちのその後に数行を割く。みな、それぞれ、見事な出世だ。


それらは自分の才能を新しい時代に発揮した結果だとは言えるが、土方歳三のように自分の来し方に筋を貫いた人間がいる一方で、彼らの姿はやはり、あまり気分の良いものではない。


その点は三好さんも私の感覚と同じかな…彼らは一様に、函館での思い出話はしても、土方歳三については口が重かったという一行を添えている。


結局、彼らは多くの犠牲の上に立って、新しい波に呑み込まれた人たちだ。土方歳三という人はそんな彼らの賛辞など欲しくはなかったろうが…