小松ノエルさんに「歳三の剣」という著作がある。それを読む前にこちらも読んでおくと歳三と総司の関係性が分かるというレビューを見つけた。
それなら、読んでみよう!
「総司の夢」小松 ノエル 著(講談社)
以下、感想。。。
ここで言う「夢」は将来の夢ではなくて、沖田総司が見た夢…ということのようだ。
近藤勇が師範を務める試衛館時代から、沖田総司が1人市ヶ谷で亡くなるまで。新選組の前身である浪士組結成の頃、彼は「鬼」を見る。
京都の治安維持を任された新選組の組頭である沖田総司に刃を向ける者が誰なのか。暗闇や突然の遭遇で確証が得られない。それでも、あたりを付け、いつしか確信に変わっていく。
しかし、その相手が同志だと思うと彼は公にせず、また本人にも明言せず、ひた隠す。
その相手のことを「男」と表現するのだが、結局、総司はその男が土方歳三だと確信し、なぜ彼が鬼になったのかと思い悩み、心を痛める。
任務としての人斬り。しかし、鬼は違う。任務を離れ、自分たちに不都合な輩を成敗する。確かに斬られた相手は、斬られるべくして斬られるような悪い人間だが、その判断を手前勝手につけて良いわけではない。
そこが総司の葛藤の元なんだけど。最後までその問いを引っ張るのはどうしてなのだろうと思ったら、思わぬところでタネ明かし。あぁ、途中にヒントはあったな!
人を斬るとその人の剣は変わる。総司が身を持って感じたことだ。どれがどうだと言うことはできないが、変わるのだ。ところが、彼は1人だけ、人を斬る前と後で剣が変わることがなかった男を知っていた。まさに彼こそ鬼だった。ここは伏線凄いわって思ったな。
架空の人物、亥之助。彼の出自や叔母との関わり。ここに総司の労咳の因を含めたのは無理が無い。他の小説でも、総司が淡い恋心を抱いた女が労咳だったという設定はあった。伝染る病なのだから、共に生活してきた新選組の隊士たちにそういった話が出てこないのは、やはり、恋人が…という設定にしやすいよなぁ。
「鬼」の正体に悩む行がちょっとまどろっこしいかとは思うけど、読みやすい小説だった。そうそう、山南敬助の切腹も実は自殺に近いという設定もどこかで読んだなぁ。
いろいろ読んでいくと、創作部分が似通った小説も散見するようになる。
「歳三の剣」も楽しみにしておこう!単行本はやっぱり図書館にお世話にならないと(汗)