今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ



WOWOWで全8話を2日で一挙放送。監督は「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク。パク監督にとって初のドラマ作品は、英語圏を舞台にパク監督にとっての外国人俳優を演出するという、イギリス製作作品。


私は、ちょっとバイオレンス物は苦手で、しかもスプラッター系はもっと無理で、代表作の「オールド・ボーイ」を始めとする復讐3部作は1秒も見ていない(汗)。それでも、その名を知ってるほどの有名監督であるわけで、この度もストーリー云々より監督の名前で見る気になった。


一応、パク監督作品も観てることは観てる。「JSA」と「お嬢さん」を…「JSA」の方は出演者に惹かれて観たわけだけど、「お嬢さん」の方はストーリー的に独特の世界観で、少々気分が悪くなったのだが…


原作はジョン・ル・カレのスパイ小説だそうだ。なるほどなぁ。ジョン・ル・カレのスパイ小説原作の映画は2本ほど観たけど、こちらも独特の雰囲気で、シビアな世界を冷静に見つめた視点が、男の物語と言えば、大げさでハデなアクション大作に慣れた人間には少しつまらない印象が残った。


はてさて、独特の世界観を持った原作を独特の世界観を写し出す名手はいかに料理するか、楽しみだ。


と、見始めたわけだが、オリジナルは6話だったものを日本の放送枠に合わせる形で8話に編集したと思われるWOWOW版、お見事。タイトル前の時間で前話分を上手く編集し、本編に繋げており、再編集の違和感は無かった…あくまでも私的にだけど。


ストーリーについては…そもそも日本人はスパイって言うとトム・クルーズが演じるイーサン・ハントが最初に思い浮かぶはずだから、華麗なアクションとあり得ないスーパーマンぶりを発揮する人だと思いがち。


でも、このドラマは違うよ!冷静に状況を把握し、呑み込まれない人間を見つけ出すところから始まる。スパイの適性を持つ人間をリサーチし、その人物がスパイとしての任務を受けざるを得なくなるまで囲い込んでいく。


全8話しかないのに、そのために2話費やす。ここが、スパイ物ドラマの肝だと思う。1人のスパイを育てるというのは、それはそれは大変な作業で、その道のエキスパートたちが、人の選定から長い時間をかけて、丹念に手を打ち、回りを固め、ようやっと任務を授けるのだ。


これを映画でやるのは無理がある。数話に及ぶドラマこその題材。


この度のスパイは女性で、調査対象が男性であるということから仕方ないにしても、なかなか過酷な仕事だ。すでにこちら側の手に落ちた男の恋人だと語るのだが、その準備が凄い。背格好の似たエージェントがその男に成りすまし、共に行動する。その中で男の情報を教えながら、あたかも本当にその男の恋人であったかのごとく、記憶に焼き込んでいく。


そして、相手の組織に近づき、それまで記憶した物を活かしていく。


彼女は俳優だった。エージェントはそこに目をつけ、架空のオーディションで彼女がスパイに成りうる素質を持つことを見抜き、彼女の行動を把握し、自然に接触を試みる。もうそこから、調査対象に成りすましたエージェントが接触してくるのだから、何も知らない彼女の友人たちは、彼女がスパイとしてエージェントに取り込まれるのではなく、女性として、出会った男性と恋に落ちたと誤解する。


まぁ、なんと凄い。こんな現実があるのかしらと思いもするが、淡々と進むだけに、よりリアルだ。


実はこのドラマは、こうした潜入までの過程が濃密に描かれ、その凄さに引き込まれてしまうが、実際に潜入してからは、まぁ、よくある話的に事が運ぶ。


ある意味、数話に及ぶドラマに最適な原作を上手く料理したなぁと。録画してから一気に8話を見通したので、少し疲れたが、久々の手に汗握る緊張感に満足度高し!