今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

本と鍵の季節


「満願」があまりにも評判が高く、やっと手にして、その評判通りの出来に驚いた。そして、次に手にしたのはこちら。。。これまた、図書館でえらく待たされました(汗)


「本と鍵の季節」米澤穂信 著(集英社)


以下、感想。。。

















主人公は高校2年生男子。中学までの何でも親掛かりを脱し、かと言って、大人とは扱われず、微妙な立ち位置の時代。あと1年もすれば人生最大の選択を迫られる者もいるのに意外にのんびりとしてるのもこの時期だろう。


まさにそんな時期を過ごす主人公に訪れる「本と鍵」の季節なのだ!


主人公は図書委員で、とにかく図書室利用者の少ない高校で、図書委員の存在意義とはなんだろうかと考えてしまうほど、ゆるい活動状況。


新2年生になった春。それまで口を利いたことも無かった松倉という男子生徒とコンビを組んで、受付カウンターに座ることが多くなった。そして、主人公にとって、ちょっと皮肉屋の松倉は気の合う友人となった。


主人公は自分で思うほど、ダメでもなく、普通でもない。そこそこ成績も良く、頭も切れる。しかし、本人に自覚が無い。まぁ、そこが彼の最大の美点なのだが…(笑)。


ほぼ週イチで担当する図書室の受付当番。その最中に主人公にはいろいろな面倒事が持ち込まれる。


まるで、高校生探偵気取りで、松倉とコンビを組んで謎に挑むのだが、その最終的な決着は問題を持ち込んだ当人に委ね、また受付カウンターに座る。


そうこうするうち、松倉のプライベートな部分に大きく関わる事件に行き当たる。


高校生2年生という子供でも大人でも無い時期だが、目の前の友人、知人の知らぬ顔まで暴き出すことに躊躇う主人公はかなりしっかりした大人の感性を持ってると言える。


松倉に関わる問題は「本と鍵」によって明らかになるのだが、解決した後、2人の関係がどう変化するのかは松倉に委ねる主人公。ただし、彼は松倉に関しては、積極的に友として、図書室の受付カウンターで彼の到来を待つことにする。


主人公は、なかなか良いヤツだ!松倉も人を見る目はある。


いろいろと現実は厳しく、高校生(主人公と松倉に限って言えば…)は確かにそうした現実世界の厳しささや悲惨さに矢面に立たされてはいないけど、それでも、何も感じないワケじゃない。彼らなりに心を痛め、悩んでる。そして、彼らなりの解決策を模索してる。本編に登場する他の高校生たちも皆そうだ。その姿がいじらしい。なんだか、爽やかな1冊だった。


ラストで主人公が松倉を待つ受付カウンターに爽やかな風が吹きかける場面が想像される。