記憶に新しい、あの低予算映画「カメラを止めるな」の上田監督の長編第2作目。
世間的には大ヒットで、テレビでも話題になって、ずいぶん注目された「カメ止め」。確かに面白かったけど、手放しでってわけではなくて、低予算でコンパクトに仕上げたなという印象で、芝居の質で言えば、それほどでもなくて…まぁ、あの学芸会的な芝居が狙いなのかもしれないけど…
今回も顔も名前も知らない俳優さんばかりだったので、やはりオーディションで選ばれた俳優さんたちをキャスティングして、低予算で製作されたものと思う。
でも、お話としては「カメ止め」よりちゃんと映画として成立してたように思う。今回も「カメ止め」と同じく、伏線回収映画ではあるけれど、映画としての流れを全く無視した挑戦作「カメ止め」に比べれば、流れの中で伏線開示しながらのお話だったので、分かりやすかったと思う。
主人公は、ちょっとぼんやりしたお兄ちゃん。彼はちょっと人に詰め寄られるとストレスで気絶してしまうという心の病を抱えている。それは子供の頃からずっとで、今も心療内科に通い続けている。
そんなお兄ちゃんは子供の頃に見たヒーロー映画に憧れ、俳優を目指してオーディションを受け続けている。
強い緊張に弱い心の病を抱えながらも俳優を目指すなんて、ちょっと変わってるお兄ちゃん。でも、本人は笑ってはいられない。この病気がバレて、バイトもクビになるし、溜めた家賃を払うアテすらなくなってしまった。
そんな時、街で偶然弟に出会う。母親の葬儀以来だから、3年ぶり。なんと弟も俳優をやってるらしい。だけど、彼の言う俳優はちょっと違う。舞台や映画で演じるのではなく、誰かの依頼を受けて、その人のために演じるのだという。
とある新興宗教に親の残した旅館を寄付しようとする姉を正気に戻したいという女子高生が、俳優事務所「スペシャルアクターズ」にやってくる。
弟の紹介で「スペシャルアクターズ」で演じることになった兄も、この女子高生の依頼した芝居に参加する。依頼人側の女子高生も旅館の従業員も参加するお芝居…なんで?この辺りが伏線なんだけど(汗)。
この芝居に参加したことでお兄ちゃんは少しずつ前進する。人に詰め寄られる場面でも気絶寸前で頑張れたり…
お兄ちゃんは最後には多少詰め寄られても気絶しないでいられるようになった。
幸せなラストなんだけど、実はそこにはカラクリがあったのだ。弟と出会ったのは偶然ではなかったし、全てが仕組まれていたことだと分かる。兄思いの弟が依頼した結果だったのだと…
伏線回収映画はネタ振り部分があるので、多少回りくどいかもしれないが、本作もそれは同じ。特に前半はちょっとダレる。映画のタイトルが出てくるまでも十分長いし、ラストもドンデン返しの展開が続くため、それも長く感じる。
「カメ止め」同様、2度、3度のドンデン返しを用意していて、これは監督自らハードル上げちゃってる気がする。上田さんの映画は、ひねりがあって当然と観る側に思い込まれちゃうとこれから大変かも…(汗)1度、普通の映画を普通に作ってみて、違う側面を見せてほしいなと思ったりする。
でも、面白かったので、ひとまずOK。