今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

トレッドストーン


WOWOW海外ドラマの一挙放送枠で2日にわたり放送された全10話のドラマ。


トレッドストーン」と言えば、トレッドストーン計画。ボーン・シリーズ大好きな人は何よりピピッとくるはず。そう、様々な難行苦行の訓練の中で、その人の人格を否定し、殺人兵器に造り上げる恐ろしい計画。


その計画に翻弄され、殺人兵器となったジェイソン・ボーンは自分の名前も忘れ、感情もないまま、組織からの指令通りに暗殺を繰り返していた。その彼が愛する人と出会ったことで、突如訪れるフラッシュバックを伴う苦痛を乗り越え、救われていく物語がボーン・シリーズの醍醐味。


それをドラマ化したというのだから、見ておかないと。ということで、一気見。


物語の始まりは、米ソの冷戦真っ只中の1973年。アメリカだけでなく、ソ連でも独自に進められていた殺人兵器となった人間の実験。その実情を探るCIAエージェントがソ連側に拘束され、二重スパイとして教育され始める。


その1973年の出来事と映画のボーン・シリーズでも匂わされていたボーンではない、他にも訓練されていた人間たちのその後の覚醒をドラマでは語っている。


確かに一対一で戦うシーンなど迫力満点。それは映画版と同じ。だけど、なんだか物語に迫力とリアルさが無い。シラットと言うんだったか、それも引用されているのか、一対一での格闘は本物だなぁと感じるが、その前後のお話がなんだか…CIAのオフィスだって、プロ達がパソコンに向かって現状を分析してる緊張感がまるで感じられない。「FBI特別捜査班」の方が画面から感じられる緊張感は高いように思う。


そんなのが影響したのか、第1シーズンで製作終了となり、そもそも次のシーズンに引き継ぐつもりで閉じたと思われる最終話のラストが全て中途半端に終わってしまった。


次に続くのか続かないのか、ラストの意味するところは大きい。最初から続編無しの予定でも、さも次に続くのかのようなラストを用意し、上手くストーリーに乗せておけば、終了後もドラマを見た人間にその後を想像させて、楽しませることができる。そんな作品は多い。にもかかわらず、本作がそうでないのは、この10話があくまでも物語の本筋へ行き着くまでの前振りだったのだと考えられる。


1973年の出来事と現在を行きつ戻りつする展開は場面展開にCMを活用してるためだろうが、WOWOWでCM無しで連続すると年代の移動が混乱する。それは1973年の街並みが時代を感じさせないからだ。なにしろ、物語の舞台は地下室のような場所で、主人公が逃げ、隠れるのだから、街並みを比較する時間が少ない。そうしたことも混乱の原因ではないか。


私たちから見たら、外国人が一遍に登場するとよほど身体的特徴(背が高いとか低いとか、男女の性別)がくっきりしてないと場面が変わる度にその変換が混乱をきたす。


北朝鮮に潜伏していた女性エージェントを演じたハン・ヒョジュは元々知ってるから分かるし、しかも、アジア人だから他の人たちと明らかに違うので、今は北朝鮮ver.を見てると分かるけど、1973年の男性CIAエージェントと現代の北極で働いていた潜伏エージェントについては、チラ見の印象が似ていて、途中まで名前が違うのは偽名なのかと思って見続けていた。でも、1973年と現代では40年以上経っているのに気づき、同一人物でないことにようやく気づく始末(汗)。


そして、最初から登場していた赤毛のおばさんが、1973年のソ連側の組織の人間のその後だったことが分かると、では、あの時のCIAエージェントはどこにって…


それが誰かと初めて分かるのが、本当にラスト。ところが、顔は出ず、あの計画が再び動き出したと伝えにやって来るおばさんがドアを開けたところで終わり…さぁ、これから何が始まるんだって時に迎えるラストは次のシーズンへの予告みたいなものだ。海外ドラマでよくあるパターンだ。まさか、ここで打ちきりが決まるとは。見る側には、なんとも言いようのない中途半端さだ。


ハン・ヒョジュ演じる北朝鮮のエージェントは国に戻ると息子がエリート養成学校に入学し、家を出ていた。これは人質だ。能天気な夫に代わり彼女が息子を助け出さなければならない。そして、北極の仕事を首になり、命を狙われ続ける男の方は妻も自分も生き延びるために妻はかつての仕事(兵器人間の現場の医療担当)に戻り、夫は自分が返り討ちにした他のエージェントになりすまし、仕事の命令を受ける。これだって、妻が人質だ。現代の関係者が次々と命を落としていくなかで、かつてのブラックバウアー計画の最後に立ち会った特別捜査員のCIAエージェントの男はギリギリのところをすり抜けながら、事件の核心(誰が計画の再始動をしたのか)に迫ろうとしている。


そして、ソ連側のあのおばさんが車を飛ばして人里離れた家のドアをノックする。ドアが開き、現れた男に向けて、組織を裏切ってKGBから逃がしたCIAエージェントの名を呼びかける。


そうなのだ。ここからの展開が気になるし、面白そうなのに。ここまでの手間を無駄にかけ過ぎてテンポの悪いドラマになっていたのだ。最初から、その後の展開も込みで、10話を段取りしたら、もっとシャープでテンポの良い展開だったと思うのだ。残念。