今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

安魂


「安魂」は「あんこん」と読む。魂を安んずる…という意味だろうか。本作は岩波ホールで上映されている日中合作映画。


撮影は中国本土で行われており、スタッフも多くが現地の人々。そのスタッフをまとめるのが日本人監督。劇中にも日本人留学生の役で日本人女優さんが出演する。


中国の一人っ子政策によって、主人公の小説家には一人息子がいる。父親として、息子を大切に育て、厳しく躾け、いつしか自分の意に沿うのを望むようになっていた主人公。


息子は仕事を熱心にこなし、寝る間も惜しんで働く真面目な青年に成長した。彼を支えたのは、けして自分の家のように裕福ではない田舎の農村育ちの娘だった。父親は家格の違いを理由に息子に2人の結婚を認めないと言い放ち、美しく凛とした息子の愛した娘に目もくれない。


あぁ、封建社会…中国の富裕層にはまだこうした意識が強く残ってるのかもなぁと感じた。


しかし、母親は違う。仕事人間の父親と違い、日々の生活の中で人と接し、人を見る目もちゃんと養っている。彼女には息子の連れてきた娘の良さがちゃんと伝わっている。


女性は強いなぁ…


そして、これまでの無理が祟ったのか、息子は脳腫瘍を発症し、父親の判断で手術を受ける。ところが、手術に反対した母親のカンが当たる。息子は術後間もなく息を引き取る。恋人のお腹に子供を宿して…


溺愛し、管理し、息子の優しさで今日まで繋いできた父子の絆。父親は呆けたように全てを投げ出してしまう。そして、たまたま街で出会った息子と瓜二つの青年に異常な拘りを見せ始める。


その青年は詐欺師の一味で、自分の中に息子を見出そうとする主人公を騙そうとする。主人公は騙されても構わないと、敢えて青年に近づいていく。


1度は家を出た母親は、主人公を心配し、家に戻る。そして、詐欺師の青年が悔い改めたところで、主人公は自分を見つめ返す。1年後、サッカーの試合を見るスタンドには主人公と妻、そして、息子の恋人と彼女が産んだ息子の忘れ形見…にこやかな笑顔で終わる物語。


あぁ、良かった。やっぱり、息子さんは素晴らしい青年だった。両親を支える女性を選び、人生を共にしようとしていたのだ。


子供が複数いることで、万が一の時、親は気持ちの整理ができるのかもしれない。そう思った。裕福で余裕があるから、たった一人の息子に全てをかけてしまう。その彼を失った時、人生が狂い出すのは当然かもしれない。


私には息子が2人いる。2人とも健康で、それぞれ独立して生計を立て、長男は結婚して5年経つ。長男夫婦は2人で毎週仲良く出かけ、楽しみを見つけて暮らしている。年齢的にも出産が限られる時期も近づいているが、私は2人がお互いを大切にし、楽しく生活できていれば、それが1番だと思っているので、孫については考えてもいない。次男は早くに結婚し、子供が生まれたけど、その後、お嫁さんのご実家と折合いが悪く、今は1人で暮らしている。


人生いろいろだ。


息子たち2人に望むことは、末永く健康で、幸せに暮らしてほしいということ。厳密に言えば、本人が幸せだと感じられる一生を送ってほしいということ。形はそれぞれで良いと思っている。こう思えるのは、日本の国が平和だからなのだろうか。