今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

史伝 北条義時 武家政権を確立した権力者の実像


大河ドラマ「鎌倉殿の13人」絡みで北条義時を特集した番組で、最近新しい視点に立って若い研究者が義時を考察していると紹介され、その若い研究者が山本みなみさんだった。


ならば、そのものズバリ山本氏の考察する「義時」に触れてみよう。昨年末発刊されたばかりの山本氏の著作を手にとってみた。


「史伝 北条義時 武家政権を確立した権力者の実像」山本みなみ(鎌倉歴史文化交流館) 著(小学館)


以下、感想。。。





















鎌倉時代から始まった武家政権。それは形を変えながらも、江戸時代まで貫かれた。その端緒となった人物を日本はずっと天皇に矢を引く者と捉えてきた。


江戸時代、いよいよ幕府の命運が尽きようとした時、倒幕勢力はそれまで下に見てきた京都の皇室を担ぎ出し、誰も見たこともない「錦の御旗」を全面に押し出した。それが功を奏して、新政府が出来たんだから、近代日本は「天皇」こそ正義という考えに傾倒していくのは当然なんだろう。


それまではけして国家に弓引く者ではなかった男を稀代の悪党に仕立て上げた。社会的に立場のある歴史家や文筆家がこうした考えを発するのだから、影響力は大きかったに違いない。


そうしたこれまでの近代日本の論説を冷静に捉え、当時の一次資料を比較しながら、時代による脚色のあったことを論じる若き研究者。


最近、大河ドラマもネタに困ってるのか、あまり知られていない時代や人に焦点を当てている。だから、数年単位でドラマの準備と並行して新しい研究結果が発表される。


今回もその在り処が不明になっていた唯一残っていた北条義時を描いた絵巻が80年ぶりに発見されたのだという。


大河ドラマはドラマとして、日本の歴史に触れるだけでなく、そのドラマを描くための資料発掘というムーブメントを起こす。


鎌倉時代は幕府開祖の源頼朝のことは知られていても、その後のことはあまり知られていない。鎌倉時代後期に差し掛かる「元寇」はみんな知ってるけど、実際にどうやって頼朝の死後、鎌倉幕府が成り立っていたのか、その後何百年と続く武家政権の基礎はどうやって作られたのか…


北条義時に視点を置いた山本氏の論説は、丁寧に語られる。


これらがすぐに大河ドラマに活かされるわけではないが、大河ドラマで皆の注目を集めたことで、今後の北条義時を始めとする執権北条得宗家のあり様がさらに小説の題材になっていけば、また、新たな世界が広がりそうだ。