今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

あの日、君は何をした

以前、新聞の下段にある書籍広告でかなりセンセーショナルな見出しを付け宣伝していた書籍だ。殺人事件の影に隠された真実は?…みたいな(汗)。


でも、当時は文庫でもないだろうし、新刊本なら話題になってから読めば良いと思ってそれきりに。


「あの日、君は何をした」まさきとしか 著(小学館豊後)


文庫を手に入れたので、読んでみた。以下、感想。。。

















東京で殺人事件が起きた。若い女性が自宅で殺害されていた。その女性の周辺を捜査すると不倫関係にあった男の存在が浮かんできた。しかも、その男は女性が殺された日から消息が不明になっていた。


この事件に関係して「あの日、何をした」のか関係者たちに尋ねる刑事。しかし、関係がないと思われ、関連も取り沙汰されてなかった事案が次々と浮き彫りになっていく。


本作の面白さはプロットの勝利、筋立てにしっかりとした芯があったことだと思う。


平素は誰にも気づかれないその人の本性がこの事件を語る上で大きなポイントになる。


正直、この登場人物はいらないんじゃない?と思えるコマもいるんだけど、主要人物が少なからず道を外し常軌を逸していくための小さな積み重ねの1つとして機能してるのかもしれない。


けして、気分の良いお話ではないが、人間はそれぞれに特徴的な感覚を持っており、それはどんなに本人が正しいと思っていても、誰にも理解されないものだったりもするということだ。


そんなそれぞれに特徴的な本性を事件の発端として15年という月日が重ねられ、事件は起こる。


普通なら笑い話で済むことなのに、それでさえ簡単に一線を越えていく人間がいる。様々な登場人物が描かれ、誰が主人公なんだろう。


あの日、なぜ彼は死なねばならなかったのか?直接的な死因ではなく、なぜそこに居て、なぜそこからいなくなったのか、なぜ、なぜ、なぜ。死に至るその時にそこにいた事の理由を尋ね歩く1人の刑事が、捜査中の事件の裏側に潜む本当の死なねばならなかった道程を暴き出す。


けして、鮮やかな推理でもなく、突き詰めた科学捜査でもなく、道理を1つ1つ確かめ辿った結果として事件のおぼろげな真相にたどり着く。


華やかなミステリーばかりに目を奪われがちだが、こうして少しずつ人を探っていく捜査物も面白いかもしれない。


ただ、登場人物、母親という立場の若くない女性の思考のパターンがワンパターンなのはちょっと残念かな。愛情という名の干渉、拘り…そして、行くつくところまで行ってしまう偏狭な視野。


ここに登場する高齢に差し掛かったの2人の母親の狂気はまるでステレオタイプ。みんながみんなそうじゃないし、近い範囲でそういう人物を呼び寄せちゃう「人」がいるかもなぁとは思うけど、共感は出来ない。


こんな怖い人ばかりの世の中は嫌だなぁ…とつくづく思う。


先にも書いたが、鮮やかな推理が展開されるわけでもなく、捜査官がスーパーな活躍をするわけでもなく、事件もスッキリと解決するわけでもない。全てにモヤモヤが残る。一言が足らなかったことで起こる闇落ち…そんな感じかな。