今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

やんごとなき一族(上・下)


現在、どハマリ中の俳優・松下洸平くんが出演するフジテレビのドラマ「やんごとなき一族」のドラマ脚本を元に文章を起したノベライズ。


ドラマと言えど、全てがシナリオ本やノベライズ小説が発売される訳ではないので、このドラマは最初から映像ではなく、文章で残すことが決まっていたのだろう。


「やんごとなき一族(上・下)」こやまゆかり 原作/蒔田陽平 ノベライズ(扶桑社)


ドラマの原作は今どきのマンガ。映画も含め、最近の映像作品はマンガ原作が多い。このドラマもご多分に漏れずの作品。


以下、感想。。。


















脚本を元にしてるので、読みながら当然ドラマのシーンが蘇る。時間の関係でカットされたであろうシーンや撮影許可の問題で場所を変更せざるを得なかった場面など、ドラマのシーンと答え合わせをしながら読んでいくのも、ノベライズの1つの楽しみではある。


ではあるが、私はとにかく本作に登場する「立花泉」が大嫌い。さらに困ったことにそれを演じるのが佐々木希佐々木希って、モデルでしょ?俳優ではないでしょ?あれで俳優と言ったら、真面目に俳優業にチャレンジしてる人たちに申し訳ないでしょ?


花泉という役は常軌を逸した人なので、細かい表情もいらないし、人に訴えかける芝居もいらない、セリフも棒読みの方がかえって真に迫っているかもしれない。その点が佐々木希のキャスティングの理由なら彼女自身は断るべき案件だと思う。ここをもっともっと普通に芝居のできる倉科カナさんクラスをキャスティングしてたら、ドラマとしては完成度の高い作品になっただろう。


明らかにイロモノ的なドラマになってしまって、土屋太鳳&松下洸平の芝居の出来る2人の世界がどこか異次元の世界になってしまってた。


実際、ノベライズも同様で立花泉はどうしようもないクズ。そして、彼女に付け入るスキを与えてる松下洸平くん演じる健太も口ではやんごとない自分の出自に反抗してるように見えるけど、振る舞いはやはり甘い。甘すぎる。お坊ちゃん丸出しだ。


その甘さは端々に現れる。いくら昔の好きな人であっても、既に自らは既婚者であり、仕事上での付き合いだけだと言うなら、かつて使っていた下の名前の呼び捨てはやめるべきだし、それが大人の対応。実際、道連れ投身自殺で助かった後、1番最初に「泉は?」とその無事を確かめ、無事を聞いて「良かった」と涙する健太には嫌悪感しかなかった。自分を殺そうとした人間にだぞ!それを妻の前で、妻に対してだぞ!このシーン以上に健太に佐都はもったいないと感じたシーンはない。


庶民から嫁いだ逞しい佐都がどうして健太にこだわるのか、全く理解できない。ドラマを見てても感じたことはノベライズでも同様に感じた。つまり、この本のままに松下洸平くんは健太を演じていたということだ。


自分の生きる世界にはいない佐都という芯の通った女性に健太が惹かれるのは分かる。誰でも無い物ねだりはするものだ。けれど、お金に執着がある訳でも、豪華な世界に夢見る訳でもない佐都がなぜ家族にいびられ、つらい思いさせられながらも健太を支えるのか、全く理解できない。


健太に佐都はもったいない。佐都なら、もっともっとステキな人との出会いが望めると思った。金持ちでなくても…


結局、ドラマで感じた事から抜けきれず、むしろ、その思いがただ強くなっただけだった…字面で読んでしまうとやっぱりダメだ。


ただ、ドラマは転機を迎える。それは原作から離れ、ドラマのオリジナルで終着するストーリー部分。


現在、原作漫画はまだまだ絶賛連載中。ドラマ以上にやんごとない世界のドロドロを驀進してるらしい。となれば、回数制限のあるドラマで決着をつけるには、原作を離れたオリジナルストーリーだ。そして、そこに立花泉はいらない!


直前までイカれきったストーリー・テラーを退場させた後、彼女の存在などまるで無かったかのように進む世界。ノベライズ執筆した蒔田さんはどう思ったのかなぁ。


健太を道連れに投身自殺を図った立花泉。彼女の殺人未遂については一切触れず、むしろ新しい道を進むよう促すことで退場させた。いくら元になる脚本があったとはいえ、あまりに破天荒。説得力がない。むしろ、逮捕収監されて人生を振り返る方が余程ちゃんとしてる。こんな立花泉のエピソードを端折って、ちゃんと佐都と健太のドラマを見たかった。


せめて、ノベライズは独自の展開でも良かったのに…と思った。


このドラマはソフト化されないそうだ。人気俳優が出演するドラマとしては今どき珍しいかもしれない。それに対するノベライズ本なのかも。


でも、ソフト化されないで良いのかもしれないと思う。義姉の美保子による佐都への壮絶なイジメや狂った立花泉の描写など、映像を見ると頭に焼き付いてしまう。そんなソフト化はいらない。


現に私は録画した放送のうち、佐都と健太の穏やかなシーンだけを敢えて編集し、それを残している。そこには泉も美保子も、その姿もその名も登場しない。


最終盤10話、11話(最終回)の土屋太鳳&松下洸平の芝居があまりにも素晴らしかったので、この部分を深堀りしてノベライズしてほしかったなぁ。全く脚本通りじゃなくても独り歩きしても良いように思うんだけど、それがノベライズなんだから!