かなり長いこと、車内広告が掲示されていた。満足度が高く、売れているという派手な宣伝文句が踊っていた。
素直じゃない私は、そんな派手な宣伝文句はまず疑ってかかる。だから、知らん顔してた。ところが、ある日、相方が職場の同僚から「これ絶対面白いから読んでみろ!」と文庫本を2冊押し付けられてきた。著者は知念実希人。
結局、仕事に追われてた相方は1度も本を開かず返したらしいが、「知念実希人」という人は人気作家なのかぁと思い、じゃあ読んでみるかと図書館に予約。
どのくらい待たされたろうか。予約したこともすっかり忘れるほど時が過ぎ、やっと手にした。
以下、感想。。。
ん〜…最初の感想は、長い!長い!もう長過ぎる!読んでも、読んでも進まない…だった。
結局、真ん中あたりまで読んで、しばらく頓挫(汗)。で、1番後ろのエピローグを読んで、ひとまず事の成り行きを確認した後、返却日も近づいてきたので猛ダッシュ…
ネタバレありの感想サイトでチェックしてみたら、結構評判良くて、面白いという感想で溢れてたんだけど、私的には…
ちょっと面倒くさいかなぁ…っていう印象の小説だった。っていうか、ミステリー。もうさ、謎解きの崖の上が長過ぎる!って。
あっ!でも、1つ感じたのはこれ映像化するよなってこと。硝子の塔を造形するには金もかかるだろうから、ドラマじゃなくて映画だろうけど。多分ね。
そして、ストーリー・テラーである一条遊馬は「松下洸平」くんしか思い浮かばない。私にはね。やむにやまれぬ事情で殺人を犯そうとするが、けして、心の正義は失わない。そんな遊馬は彼にぴったりだ。
対する名探偵の碧月夜は「満島ひかり」。碧月夜に関しては身長175センチの遊馬に迫る長身の女性なんだけど、思い浮かぶ女優がいない。年齢的に松下洸平くんと同等あるいは年下で男のようにスーツの似合う女優と言ったら満島ひかりさんしか思い浮かばない。
正直、あまりにも読み進まないので、読んだ文章を頭で2人に変換して映像を想像しながら読み進めた。そしたら、結構進んで(汗)、無事返却日までに読みきれた。
それほど、映像的な作品だと思った。今や文章から読み手の想像力で如何様にもお話の世界が広がっていく「読書」の世界などないのだろう。三島由紀夫や芥川龍之介の時代はもう遠い昔。。。
鮮やかなトリックの読み解きなど一切なく、密室連続殺人に踊らされた人々の話として読むべきかと思う。これはミステリーではないなぁ。殺人事件に巻き込まれ、その謎解きに翻弄される人々の話なのだから。ミステリーとしては正直面白くないし、謎解きはあくまでも死人に口無しの名探偵の推理を聞く話。
哀しい碧月夜の物語というべきか。これ、文庫版は出版されてるんだろうか。もし、本作の書き手が高村薫さんなら、この小説を文庫化する時、とんでもない分量の加筆修正をし、タイトルも変えてしまうんじゃなかろうか…と。碧月夜さんのバックボーンがあまりに弱いし、登場人物たちの背景も薄い。本作は、あまり書き込まず、読み手の想像力に委ねるという文章でもない。
だからこその鈍行列車だったんだなぁと妙に納得してしまう(汗)。でも、ミステリーなんだから、面白くないとね…
あの恐ろしいほど分厚い「ヒトごろし(京極夏彦 著)」を4日で読み切った面白さに、いつになったら出会えるんだろう。