今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

三千円の使いかた


最近、ふと目にした新聞の書籍広告に「三千円の使いかた」が!


ちょうど読みかけの本がまさにそれ(汗)。とりあえず、読みたい本もなく、図書館のサイトをぼんやりチェックした時、予約の多い本の上位に登場してた本作。


作者も存じ上げないし、てっきり節約ハウツー本かと思って、息子達が完全に独立し、これから夫婦2人の生活がメインになる私にぴったりかと思って予約。さぁ、どんな本かしら…(笑)。


「三千円、使いかた」原田ひ香 著(中公文庫)


以下、感想。。。





















タイトルから抱いてた予想は大ハズレ(汗)。節約ハウツー本なんかじゃなくて、ステキな家族の物語だった。


祖母、嫁、娘2人…御厨家の女性4人のお金にまつわる物語。


正直言うと、祖母の琴子さんは私にはちょっと現実離れしてる裕福な人だと感じられた。うん…宮本輝さんの小説によく出てくるちょっと上品で敬語を使い、生活に追われてないご婦人。


琴子さんは、年頃でいったら、私の母親と同世代だけど、全然ゆとりを感じられる生き方をされている。預貯金(亡くなったご主人の退職金と生命保険)の額からして、私には現実味が全く無い。


そのことで、私自身は本作を小説として見切ることができた。もし、我が両親が琴子さんと同じような生活ぶりなら、どこかハウツー本的な捉え方をして、きっと読みながら道に迷ったことだろう。


手近なところで、3000円手元にあって、自由に使って良いと言われたら何をする?


かれこれ30年以上連れ添ってる相方はまず財布にしまうだろ。3000円だし、いい大人だし、いきなり貯金するとは言わないが、きっとまずはしまうはずだ。


だけど、私は?


まず、手に持った3000円を見つめ、それで出来ることを考える。今晩の献立か、食べたいスイーツか、欲しい物か…そして、先々を考えてさらなる収入が見込めるなら、それをプラスしてもうちょっと奮発できるまで温める。でも、それが期待できないなら、使っちゃう。もちろん無駄遣いじゃなく、欲しい物、必要な物を大前提に選択し使う。


そう、手近なお金の使い方って人の「素」が出てしまうのだ。それは育った環境やその後の生活で培われ、人それぞれの選択がある。私と相方はその辺の認識が30年以上も一緒にいながら、一向に近づかないし、相容れない(汗)。


いつか、その微妙な(実は大きな…)ズレは溝になって、何事か私達に降りかかりかねないけど、今のところ、そうしたことは回避できている。それが幸せなことなのか、正直分からない。


本作を読むと、もっともっと前に私達は話し合っておかなければならなかったのではないかと感じる。でも、もう戻れないしね…(涙)。


これから出来ることに少しずつチャレンジしていけば良いのかな…って、街絵さんの生き方を知って思った。


そして、翔平くんと美帆ちゃんのこれからを不器用なお父さんとちょっと考えがちな智子さんが真剣に考えてくれたラストにボロボロと涙する。


最後の最後で、こんなに泣かされるとは思わなかった…


でも、これは小説だ。私が智子さんの立場ならどうしたか?絶対に結婚は認めない。確かに娘の連れてきた男は良くできた人物だし、見込みはありそうだ。しかし、彼の両親はどうか?親と子は関係無い。確かに関係無いけど、その生活感覚は体に染み付いているし、そこで育ったからこその今なのだ。それは若い頃には気づかない、いや、認めないのだ。自分は、自分だけは、この環境下でも左右されずに生きていけると期待と自信を持っているのだ。それが判断を迷わせる。


タイトルが現実的な割に内容はファンタジーな本作。ドラマにしたら大いに盛り上がりそうだ。