今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

戦場記者


久しぶりに硬派な映画を観ましたよ。しかも、大好きな劇場、角川シネマ有楽町で。こちらの劇場は相変わらず、独自の視点でプログラムを組んでて、流石だなぁと思いました。


実はクライマーの山野井泰史さんの映画も上映してるのは知らなくて、両方観られる時間帯で出かければ良かったなと後悔。スクリーンが1つだけだから、違う作品を観る時はちゃんとスケジュールを把握しとかないと(汗)。


本作は、TBS報道局に在籍する特派員記者を追ったドキュメンタリー。ロバート・キャパみたいなフリーの立場ではなく、あくまでTBS報道局の支局に籍を置き、会社からの取材要請に応じて、取材先に出向く会社員記者、須賀川拓さんが自ら監督し、自らの取材先のレポートと戦場報道の現実を語っている。現場報道をする自分とその結果との狭間での葛藤を言葉にする。


須賀川さんは家族と共にロンドン在住。TBSの海外支局であるロンドン支局にデスクを置くが、それは間借りで、彼はたった1人の中東支局長であり、支局員。


会社の命令で取材先に乗り込むので、当然ながら、戦闘の最前線に行くわけではない。それでも「戦争」の現場であることは変わりないから、命を守るために出来得る限りの準備を整え、しっかりとした現地コーディネーターを雇って出向く。いくら、戦闘の最前線ではないと言っても、安全なところから望む景色を伝えるわけではないのだ。


須賀川さん自身の覚悟も伝わってくる。


戦争と一言で言っても様々な局面があり、確かに戦闘中にカメラやマイクを向けるわけではないが、須賀川さんは戦闘の数日後には現地に入る。しかし、日本への報道が主とした目的なのだから、現地の許可もしっかり得て、安全(この安全はあくまで戦時下の安全であり、平和的な安全を意味するものではない)を確認した上で「今」を伝える。


そのことが果たしてどんな役割を果たすのか、須賀川さんは迷いに迷い、葛藤する。しかし、一元的な報道に終始したかつてと違い、現代はインターネットやSNSなど発信の方法も増え、結果、テレビ報道では限界のある「今」も伝えられるようになった。


それでも、彼が「今」を伝えようとする姿に「偽善」と言う言葉が投げかけられるのだと…「偽善」は確かに厳しい言葉だな。


確かに報道するだけでは、直接的な現地の人々の助けにはならないかもしれない。でも、須賀川さんは言う「我々の行動は偽善かもしれないが、そこから何かを感じ取り行動する人に繋がれば良い」と…


そうなのだ。誰かが伝えねば「今」は知りようもないのだ。須賀川さん達、戦場記者は「戦争」が引き起こす現実世界ではとそこに暮らす人々の姿を「伝える」ことが第一の役割なのだ。


100分程度の尺だが、イスラエルパレスチナガザ地区での戦闘に始まり、アフガニスタンの現在、そして、ロシアのウクライナ侵攻と、各地の「戦争」を次々と映し出すので、やたら緊張感も強く、かなり長く感じた。久しぶりにヒリヒリとした映画を観た。