今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

光のとこにいてね


新聞の書籍広告で大きく取り上げられていた本作。「スモールワールズ」の著者の最新作だ。


「光のとこにいてね」一穂ミチ 著(文藝春秋)


以下、感想。。。















一穂ミチさんの小説は「スモールワールズ」を読んだだけで、本作で2作目になる。「スモールワールズ」でも感じたけど、読んで感じるお話の印象が湊かなえ作品と似ている。


湊かなえさんの小説は基本的にはミステリーだけれど、「嫌ミス」という言葉を生み出したほどのスッキリしない後味悪い作風で、謎解きに重点を置いたミステリーとは一線を画し、登場人物たちの心の奥底にあるものをあぶり出していくような、どちらかといえば、物語の中での「ミステリー」はあくまで登場人物たちを結ぶ「鎖」でしかないような…


一穂ミチさんの小説は、まさにそんな感じ。


登場人物2人が互いに共有した出来事、時間をそれぞれが語る。一応、一人称小説ではあるけれど、2人は同じ時間を共有しながらも視点がちょっと違う。


つまり、この辺も湊かなえ作品との共通点だ。ある出来事は、出来事としては1つだけれど、そこに関わる人物の視点や心情というフィルターを通して語られると全てが一様ではない。


本作の登場人物2人は、まさにそうした視点の違いで、いつしか離れ、また偶然出会うことを繰り返す。


一言で言っちゃえば、お互いに相手がまさに運命の人なのだ。本人たちの意志に関係なく、どんなに物理的に離れようと時を隔てて再び出会う。そこに性別も年齢も、生活環境すらも関係ないのだ。


そして、いつか、いつの日かまた出会えることを願い、1人は人生をやり直そうとする。そして、その決意を知ったもう1人は自分の思いに蓋をして、送り出そうとする。


健気だし、いじらしい、純愛物語だ。


ただ、出会いも出会いだし、設定も設定なので、2人が最終決断を下すまでの道のりが冗長に感じられて、一向にページが進まなかった。


年の離れた弟の、登場人物2人の関係に対するストレートな思いを聞いた時、初めて2人は互いへの思いの深さを実感したのではないか…


それぞれの心に根付く夢物語であったものが「現実」として目の前に提示された。


きっと、2人の世界はもう決まっていたんだ。でも、互いに子供で人生への責任も何もなく、大人の影響下を抜けられなかったから、心の奥の真実に目を向けて来なかった。


私には、2人の世界は理解できない。でも、これほどお互いを思いやる関係も知らない。なんだか、すごいものを読まされたような気がする。


そして、それぞれのパートナーは2人の関係をどう受け止めるんだろう。1人は別の道を進むことを決めた。でも、もう1人は?


そこから先は読み手に委ねられた。