今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

スモールワールズ


新聞広告で、話題になってる著者だと知り、本作でその話題を得たと知った。新作が発表された隙に競争率の落ちた本作を読んでみた。


「スモールワールズ」一穂ミチ 著(講談社)


以下、感想。。。






















内容は6篇から成る短編集。連作ではなく、個別の短編で、表題の「スモールワールズ」という名の小説はない。6篇を総じて「スモールワールズ」なのだろう。


人々の注目を集める大きな世界ではなく、ある個人を取り巻く非常に小さな世界のお話。人との関係性の中には言葉では言い表せないことも多い。それぞれ、相手への想いがあっても、それを言葉にすることで壊れてしまうなら、敢えて言葉にせず、そして、気づかぬ事としてやり過ごす。


けして、本心ではないし、もしかしたら、別な方法こそが最良なのかもしれないけれど、それでも自分の精一杯で相手を思いやり、言葉を選び、また別な言葉を飲み込む。そうやって、人は人との関係を築いていく。


結果は数学のように明確でなく、そこにそれぞれの想いが介在し、受け取り様はいくらでもありそうだ。まさにそれを描いている。


面白かった。


そして、思い出した。湊かなえさんの著作を初めて読んだ時の感覚を。


3篇目の「ピクニック」は読みながら、どんどん戸惑っていった。そして、ラストまで読んだ時、湊かなえさんの「リバース」を思い出した。


ドラマ化されて話題になったけど、「リバース」は圧倒的に原作の方が良かった。ドラマは結局見る側に阿る傾向が強くて、シビアなラストをサラリと語る小説にはまるで敵わない。未だにドラマ「リバース」が評価されていることに私は全く理解が及ばない。


読み手の希望を打ち砕くラストはまさに湊かなえさんの手法と似ている。


短編だからこその締まりと緊張。読みながら一言一言が意味を持ち、回収されていく流れも私好み。


良い作家に出会えた。次は新作を予約して待ちたいと思う。