今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

翳りゆく夏


つい先日、WOWOWドラマW(WOWOWオリジナル・ドラマ)で放送された「翳りゆく夏」の原作本を読みました。


主演は、渡部篤郎。彼の昔の上司に時任三郎、2人の勤める新聞社の社長に橋爪功。脇もしっかりとした役者が固めている。


事件のキーとなる若い男女は、今や注目の若手男優の菅田くんと門脇麦ちゃん、そして、アイドル辞めた前田敦子ちゃん。


ドラマはとても締りの良いしっかりとした作品で楽しめた。謎解き部分もあってなかなか良作。やっぱり、渡部篤郎が出るものは出来が良い。まぁ、全部じゃないけどね(汗)


で、実際の小説はどんなものかと読んでみた。


「翳りゆく夏」赤井 三尋(講談社文庫)


以下、感想…













基本的にドラマは、ほぼ原作通りに進んでいることが確認できる本作。


ドラマのしっかりとした作りは原作に依るところが大きのだと知る。


テレビと原作の違いと言えば、誘拐事件の身代金受け渡し場所が違うことや事件の黒幕の入院してる病院が違うことなどで、あくまで撮影の都合上変更されたに過ぎないところばかり。


映像作品の完成度は、原作に依るところが大きいことを証明したようなものだ。原作の無いオリジナルなら、その役割は脚本が請け負う。骨組みがしっかりと構築されていないと骨格の無いふにょふにょな話になってしまうのだとあらためて感じる。


赤井三尋さんは放送関係者で、発刊当時も現職にあったそうだ。そこが映像との兼ね合いで大きな力となっているのかな?


さて、小説の内容は、新聞社を舞台に20年前に起きた未解決の誘拐事件について語られる。


なぜ、解決しなかったのか。身代金を受け取った犯人が逃走中に事故死したことや様々な「偶然」が事件を複雑化していく。


何も無ければ、そのまま誰も気にも止めず、記憶の彼方に忘れ去られたままだったはずの事件。


20年後に再度事件を新聞社の視点から洗い出すきっかけとなったのは、日本の一流紙の1つ「東西新聞」の厳しい入社試験をトップの成績で突破した学生が20年前の誘拐事件の際に亡くなった犯人の娘だったこと。


父親の犯罪と学生は無関係。一切を飲み込んだ東西新聞。ところが、その事実を嗅ぎつけた週刊誌にセンセーショナルに書き立てられる。


数年前の行き過ぎた取材の責任を取る形で閑職にあった主人公は、20年前の事件の再調査を社長から命じられる。


久しぶりに記者のカンを働かせながら、当時ちょっとした「ズレ」で埋もれてしまった事実を洗い出した主人公は、考えられる結末の中で、1番認めたくないそれにぶち当たる。


この辺りは、本当に面白い。


さらに最後のナゾについても…


お話の内容以外にも、文章表現や言葉遣いが美しいなぁと思うこと度々。いわゆる「純文学」ではない。ミステリーと言ってよい作品で美しい表現の文章ってちょっとミスマッチのような気がするけど、実際に読んでみると気持ちの良いものだ。


しっかりと読むのに良い小説です。