今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

新選組 「最後の武士」の実像


久しぶりの新選組本です!ただし、この度は土方歳三を主人公にした創作物ではありません。


数々の新選組の実録をその出典を明確にしながら、順序立て、江戸での浪士組結成から函館での戊辰戦争終結までを事実に基づいて書かれている。


新選組 『最後の武士』の実像」大石 学 著(中央公論新社 中公新書)


以下、感想。。。














評伝とも史談とも違うと思われる本作。様々な新選組研究書を突き合わせて検討し、確実とされる史実を順序立てて書いている。


幕末の混乱期に残された文書は、全体を見渡すというより、自分の目で見える範囲での「事実」を書き残した物がほとんどだろう。


その時代の歴史を語る書は、混乱期を乗り越え、勝者の側の人間が勝者の意を汲んで書き残すもの。幕末から近代日本にかけての時期は、それまでの長く続いた江戸期の価値観や常識を西欧に近づくために全てにおいて、手を入れなければならない緊急の課題が山積で、勝者の側も自分の勝利や正義を勝ち誇る暇も無かったに違いない。


たかだか150年前の新選組の研究が大河ドラマで注目されるまでずっと限られた地域の語り物程度の扱いで終わっていたのも仕方ない。


まぁ、明治政府にとって、単なる幕臣たちよりよほど新選組は憎き相手に違いなく、そちらの名誉など顧みる気など無かったに違いない。


そういう意味で、本書のように冷静に新選組の来し方を記した物は価値があると思う。


小説になると俄然存在感を増す土方歳三もこうして時代の流れの中で見ていくとあくまでも「新選組」という組織の一員であり、近藤勇に比べ、表に出てくることが無い。


それでは、なぜ戊辰戦争が江戸、東北と場所を移すし従って、彼の名がクローズアップされてくるのか。その辺りの考察は本書にはあまり無い。


新選組はあくまで局長の近藤勇が表に立ち、実際の仕事の場面では沖田総司を始めとする各隊士たちが全面に出ていたのだろう。土方歳三はその参謀としていつも2番手に位置し、全体をコントロールする立場にあったのか?


近藤勇が処刑され、沖田総司が病に倒れ、新選組が瓦解していく過程で、それぞれの隊士が時代の流れの中で自分の道を進んでいった。


函館の地まで進んだ新選組の中で京都からな隊士はごくわずかだが、彼らをそこへ向かわせたのはなんだったのか。その辺は時代の流れに大きく関わりがあるだろうなぁ。


本書はあくまでも、考察や評論より論証のある「事実」を検証したものである。1度読んでおくと、他の書籍を読む際の手助けとなると思う。そういう意味では貴重な一書。