今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

夢の燈影 新選組無名録


久しぶりの「新選組」。
一気に読み終わった。


「夢の燈影 新選組無名録」小松 エメル 著(講談社文庫)


以下、感想。。。















近藤勇土方歳三沖田総司新選組と言えば、この3人の名がまず出てくるのだが、本作は彼らは脇役。新選組に在籍した隊士が主人公の短編集。


それぞれが自分の任を全うする中での葛藤が綴られている。


全くの無名隊士ではないけれど、エピソードが多く語り継がれているわけでもない隊士。エピソードの端々に近藤勇土方歳三沖田総司も登場する。その3人がまた良い味を出している。


面白い。特に事件があったわけでもない。むしろ、大きな事件は主人公たちには直接関わりがなかったりする。そんな中で、今の自分のあり方に葛藤する姿が描かれる。


主人公の目から見た新選組、江戸の試衛館以来の幹部たちの絆、見方が違うからいろいろな姿が見える。


全編通してわずかな登場だが、土方歳三は自分の仲間とそこに集う者を最後まで守ろうとして鬼になり、鬼であろうとした男だったのだと描かれる。


腕に覚えがあるのだけが取り柄の数人の若者が、故郷を離れ、当時の国の中心である京都で、後世に名を残すことになろうとは誰が想像したろうか。本人たちだって、夢を追いかけていたのに過ぎないのではないか…


語り継がれる歴史は勝者のものだが、1世紀も過ぎれば、後世の人間たちは勝者の言い分を鵜呑みにするほど一途ではなくなり、冷静な目で検証し始める。


そんな機運が、新選組にも訪れて、今こうして面白い小説の題材になるのだ。


腕は立つが、金は無く、江戸の貧乏道場に身を寄せた男たちが時代の流れに乗って、幕府凋落の時期に最後の武士として登場する。彼らが時代の先頭を駆け抜けたのはほんの数年。様々な人間が集まり、死に、駆け抜け、崩れ去った新選組。そりゃあ、小説の題材としたら最高だよなぁ。。。


小松エメルさん。読みやすく、面白い時代小説作家でした。