今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

虎狼は空に 小説新選組(上・下)


先月末に突然襲ってきた肩痛、人は四十肩とか五十肩とか言うが、なんちゃらの石灰化だと診断され、正式な病症名も聞いたのだけど、あまりの痛みにそんなもの全部右から左…


今では1本の注射で劇的に改善し、少しずつ元の生活に戻りつつあるのだが、その間に嘘みたいに連発で当選した試写会は全部パス(涙)。本を読む気力する起きてこない日々…その中で、なんとか読みかけだった本作を読み切ることができた。


「虎狼は空に 小説新選組」津本 陽 著(角川文庫)

以下、感想。。。

















津本陽さん…お名前は知ってるが、どんな小説を書いてる方なのか全く知らない。ただ、どこかで新選組に対しては良い印象を抱いていない作家だと聞いたことがある。


鞍馬天狗」では完全に悪役だったという新選組…その流れに近いのかとある程度覚悟して読んでみたけど、それほどでもなかったな…


というか、全編通して、沖田総司永倉新八の目線から描かれることが多く、近藤勇の1番の腹心で影の如く寄り添い、実質的に新選組を統べる土方歳三はほとんど登場の機会がない…


登場はするけど、土方がどうだこうだでなく、「あの土方なら…」とか「土方の指図で…」とかあくまでも語り部たちとは一歩離れた立ち位置だった。


まぁ、実際もそうだったんだろうなぁ。何も足がかりが無かった新選組が京都で縦横無尽に動けるはずも無いし、それこそ、あちこちへの陳情や交渉で日が暮れていくこともしばしばだったろう。新選組は剣客集団だ。役方などいない。金の計算の出来るヤツはいても、いざ幕府のお役人に交渉事ができるヤツなど皆無だったに違いない。それを担ったのが、土方歳三なんだろう。


農家の出で、京都へ出向く直前まで家業の薬を背負って行商していた男が、京都では全く違う立場になる。元々のセンスというか才能もあったのだろうが、人一倍学んだに違いない。ただの剣豪ではいられなかったはずだし、剣においては、それこそ沖田総司永倉新八斎藤一など自分より強い者たちがいた。その点は彼らに任せられたのだろう。


新選組は剣客集団であるという視点に立てば、土方歳三の登場が少ないのは致し方ないのかも…


上巻は沖田総司の視点で話は進むが、彼が胸を患い、巡察に出られない状態になってくる下巻では永倉新八の視点に変化していく。現場で戦う者たちの視点だ。


映画「決算!忠臣蔵」と同じだ。武士は戦うことが全て。沖田総司永倉新八新選組においてまさにその代表格だったわけだ。


小説は戊辰の役が始まるところで終わっている。まさに新選組新選組として確立していた最後の時で終わっているのだ。武士としたら、その後は敗走に次ぐ敗走で、語るのも憚られるのかもしれない…当時の人達の感覚的なものまでは分からないが…