今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

智に働けば


石田三成を描いた小説と言えば「八本目の槍」


家康が開いた江戸幕府にとっては、石田三成は自らの足元を固めるために必要な駒だったはず。彼を徹底的に「悪」として追求することで…


家康も結構小者だったんだなぁと思う昨今。


「智に働けば 石田三成像に迫る十の短編」山田裕樹 編(集英社文庫)


以下、感想。。。
























編者の方のあとがきに、とにかく「八本目の槍」が登場するまで、石田三成に関する読み物は書き手の偏った物の見方が反映され、面白おかしく悪者化されたり、どこかの場面にほんのり存在が匂わされたりという扱いだったそうで10篇の短編を集めるだけでも容易ではなかったそうだ。


徳川幕府を自分たちの勝手な都合で打ち破った新政府も精神性の部分で家康の流した戯言までは手に掛ける余裕はなかったのだなぁ。


石田三成に関する最新研究は現代でやっと端緒についた感じなのだ。人物の名前が大きくても、時の覇王に刃向かうと後世まで祟るのだ。


真ん中辺りに配された短編は官能小説風でちょっと読むのが苦痛になり読み飛ばしたが、後半の短編は石田三成がしっかり登場し、三成の物語だった。


それほど良い家の出ではないのは当時としては普通だ。後々、名を挙げる大名たちだって似たりよったり。その中で、三成が誰も敵わないほどに「豊臣家のため」に生きる道を選んだのはなぜだろう。


有名な関ケ原の裏切り者、小早川秀秋。文官への恨みと妬みで裏切った急先鋒、福島正則。彼らの他にもたくさんいる豊臣恩顧の裏切り者たちは、結局、家康にたぶらかされただけの阿呆。江戸の時代が盤石になると次々と失脚し、見るも無惨な状況に堕ちていく。まぁ、自業自得ではあるが、なぜ、こうも狸にバカされたのか…


生き残ったのは狸と同じで立ち回りの上手い策士ばかり。黒田家はまさに、策士の家計が軍師なったわけだ(笑)


こうした状況の中でも家康の「悪」を見抜き、正面切って戦いを挑んだ三成の本当の姿をいつか知りたいものだ。「八本目の槍」は納得できる三成像だった。新たな作品を待ちたいと思う。